研究で利用している数学

ここでは、私が研究で利用している数学について簡単に説明します。数学が役に立つこともあることが伝われば幸いです。応用を意識した数学の解説を

に書いていますので、興味のある方は見てください。

なお、このページは私の研究の進み具合でどんどん変化していくと思われますので、ご注意ください。

 1. 微分積分

微分は使いまくりです。研究していると変数が行列だったりすることもあるので、普通の微分を一般化したフレッシェ微分とかも使います。積分は今のところあんまり使っていません。微分方程式は解を求めるために積分しますが、数値計算で求めてしまうので積分論の深いところを意識する必要は今のところないです。

2. 線形代数

驚くほど使います。固有値、固有ベクトル、特異値とかよく頭の中に浮かびます。ジョルダン標準形を意識することはあまりないです。行列の標準形は色々あるっていうことを知っていれば適宜本を参照すれば良いのではないでしょうか?あと、行列は色々な方法で分解できるってことも覚えておいたら良いと思います。LU分解とか。他の数学を学ぶ上での基礎になりまくっているし、制御工学以外の色々な分野でも役立ちますし、しっかり勉強しといて損はないです。

3. 集合と位相

商集合の概念は高度な数学を理解する上で重要です。位相の概念も多様体とかを勉強する前に知っていないとキツいです。研究では、多様体とか商多様体とかがよく出てくるので、集合と位相の概念を意識することはよくあります。例えば、ベクトル空間は多様体でもあります。ですので、ベクトル空間である対称行列や反対称行列の全体は多様体でもあります。ベクトル空間ではない多様体の例としては、正定値対称行列や直交行列全体の集合などがあります。正定値対称行列や直交行列は制御工学の問題によく出てきます。

4. 代数学と幾何学

線形代数で学ぶベクトル空間は代数学の言葉で言うと体上の加群のことです。代数学の中には、線形代数で使われている概念をもっと抽象化した概念があります。例えば、群や環など。制御工学では、対象とするシステムを微分方程式で表現することが多いですが、微分方程式の解との関連でワンパラメータ変換群という群が出てくるというように、代数学の概念も制御の問題を考えていると自然と出てきます。代数学の本だけ見ると、代数学は非常に抽象的なのですが、幾何学の中でも代数学の言葉は使われており、幾何学を学ぶと代数学の抽象的な概念が理解しやすくなると思われます。代数学や幾何学を勉強すると正定値対称行列の全体の集合は実は簡約等質空間だってことも分かったりします。簡約等質空間の何が嬉しいかって言うと、測地線を積分しなくても求められてしまうことです。普通は測地線を求めるときは、非線形な微分方程式を積分しなきゃならんのですが。直線を一般化した測地線ってのも制御理論を研究してると出てくることがあるんです。

5. 関数解析

制御理論を研究していると、 L^2 空間、  L^{\infty} 空間、 H^2 空間、 H^{\infty} 空間とかはよく論文で書きます。状態空間が有限次元であっても、入力や出力を関数空間の元だと捉えることで、上記のような関数空間を考えると理論展開する上で便利なことがよくあります。物理現象を表現する数理モデルの場合、状態空間が無限次元になることが多々あるのですが、その場合は関数解析的なアプローチで研究をすることが多いようです。自分は今のところ元々は状態空間が無限次元であっても、離散化して大規模な有限次元問題として近似して考えるというアプローチをとっているので、状態空間を無限次元のまま扱うことはないです。

6. リーマン幾何学

アインシュタインが一般相対性理論を構築した際に用いた数学として有名ですが、私も研究で利用しています。具体的には、制御工学の色々な問題をリーマン多様体上の最適化問題に帰着させたりしています。リーマン多様体上の最適化問題に帰着させることができれば、目的関数が微分可能であれば、リーマン計量を適当に導入し、勾配やヘシアンを計算することで最適化問題を数値的に解くことが可能になります。凸最適化理論は多くの人が研究していますが、リーマン多様体上の最適化問題を研究している人は、この世に50人も居なく、日本に限定すると3人も居ないような状況ぽいので、まだまだ研究されていないことがたくさんありそうです。